さざなみの声

6


 翌朝、店に着いて

「おはようございます。店長、ありがとうございました」

「おはよう。う~ん、何かスッキリした顔してるわね。二日間で、すっかりリフレッシュ出来たみたいね」

「はい。ご心配お掛けしました。もう大丈夫です」

「じゃあ、一昨日から来てもらってる新人の教育係り頼んだわね」

「はい。分かりました」



 そして六月最後の日曜日。麗子の結婚式。披露宴会場に早めに着いた。私は、みゆきの結婚の時に作った、もう一着のドレスで出かけた。ロビーに入ると先に来ていたみゆきが「寧々」と手招き。

「久しぶり。新婚生活はどう?」

「う~ん、忙しくて新婚気分なのかどうか」

「みゆきらしい」と思わず笑った。

「あぁ、シュウもさっき来たところよ」

「そう」

 ロビーを見渡していると私は意外な人を見付けた。どうしてこんなところで……。

「みゆき、ちょっとごめん。知ってる人が居て」

「うん。いいわよ。行って来たら? ここで待ってるから」

 私は是非もう一度お会いしたいと願っていた方を見付けた。

「こんにちは。先日はありがとうございました」

「あら、あの時の? ペンションで会いましたわね」

「はい。朝お会い出来なくて。早く立たれたんですね」

「えぇ、そうなの。きょうは? どなたかの結婚式かしら?」

「はい。青木家と井上家の」

「まぁ、同じお式の? 私、青木清吾の伯母ですのよ」

「そうでしたか。私は井上麗子さんの学生時代の友人なんです」

「なんてことでしょう。世間って狭いって言いますけど本当ね」

「私、石岡寧々と申します」

「寧々さん? 何て可愛らしいお名前なんでしょう。とても良くお似合いよ」

「ありがとうございます。きょうはご主人は?」

「その辺で、お話してると思うんですけど……」

 そこへシュウが来て……

「お話中に申し訳ありません。寧々、麗子とみゆきが探してたよ」

「はい。分かった。すみません。ちょっと失礼致します」

「えぇ、どうぞ。また後で、お話しましょう」

 シュウと私が歩いて行く姿を見て……。

「やっぱり近くに居たみたいね。寧々さん」

 微笑ましく見送ってくれていた。そこへご主人が戻って

「あら、あなた。この前ペンションで会ったお嬢さん、麗子さんのお友達なんですってよ。今ここで話していたの」

「へぇ、あの時のお嬢さんがかい? まったく世間は狭いものだね」
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