箱入り娘に、SPを。
えーーー!いつから、どこに、どんな風に?
だって鬼塚さんに交代してから、小太郎さんは一度しか現れなかったし、それに────

“SPの人数を増やしてた”?
ふと思いとどまる。
ということは、鬼塚さんは私のそばにいたけれど、他にも何人かいたということ?

なるほど、それで彼の“あの行動”の意味もよく分かった。

マンションのエレベーターで、「今しかないから」と抱きしめられた時。
あれは他にもSPがいて、本当に二人になれる時があの瞬間だけだったからだ。


「美羽ちゃん?顔が赤いけど大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」

心配そうなツネさんにはたいへん心苦しいが、それでもこんな顔になった原因はなにしろ小太郎さんにあるのでここでは言えない。

まったく、あのひとは本当になにも言ってくれないんだから。それでこうやって私はいつも心臓が跳ねてしまうんだ。


もう間もなく病院の入口に着くという時に、ツネさんのスマホが鳴った。
どこにしまったっけ、とキョロキョロ自分のスーツのジャケットやらスラックスのポケットやらをぽんぽん両手で軽くはたきながらスマホを探している。

その様子がおかしくて、思わずくすくす笑ってしまった。

「あっ、あったあった」
と、ツネさんはようやくどこかから見つけ、私にごめんねと手をひょいと上げて背中を向けて離れていった。

「はいはい、あっ、おーーー。どしたどしたー」

なにやら親しげに話す声が、少し遠ざかっていくのを見届けていたら。
気を抜いていた私の背後に、唐突に威勢のいい腹式呼吸の大きな声。

「折笠さんッ!お身体はどうですかッッ!」

「うわぁ!!!!!」

本気で驚きすぎて、私自身も大きな声を上げてしまった。

「しまった!また自分、声が大きいことを忘れておりました!」

と、己の行動を心から悔いる大柄な男性。
まさかと思ったが、鬼塚さんだった。こんなところで会うなんて。
彼こそ、裏表のない正直なひとである。


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