箱入り娘に、SPを。
鬼塚さんは本当に上にも横にも大きな筋肉ムキムキの身体を、スーツに無理やりねじ込んでいる感が否めない。
それなのに、もじもじと縮こまるような仕草をよくするのがなんとなく可愛かったりする。

今まさに目の前でそんな仕草をしていた。

「折笠さんが今日ここに来ると恒松さんからお聞きしまして!三上さんにもご挨拶したかったし、その…改めてこの間の自分の大失態を…折笠さんにお詫びせねばと思いまして…」

「大失態?」

「折笠さんが誘拐されたあの日…」


彼も私も、同じく十日ほど前の出来事を思い返した。
あまり思い出したくはないが、悠月にホテルのロビーに連れ出された際、一瞬だが鬼塚さんの姿を探したことは間違いない。

しかし大きな体がトレードマークなはずの彼は、人混みに紛れて見えなかった。
頭ひとつ出るはずだから、すぐ見つけられるかと思ったらそうではなかったのだ。

「あの時はどこかに行ってたとか?」

「いえ、そうではなく…。た、たいへん申し訳ありません!!」

ガバッと体を折りたたむぐらいの勢いで頭を下げられる。
すさまじい勢いのせいで、風圧さえ感じた。

「あの講習会に休憩があるとは思わず、出来心でソファーに座ってしまって!そのまま!あるまじきことなのですが!寝てしまいました!!」

思わぬバカ正直な真っ向勝負の説明に、こちらは目を丸くしてしまった。
そして、込み上げる笑い。

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