箱入り娘に、SPを。
でも、と小太郎さんがなにやら眉間にしわを寄せて険しい顔になる。

「僕、たぶん人生で一番頑張らなきゃ。君のお父さんに認めてもらわなきゃいけないからね。うん、本当に、頑張らないと…」

と自分に言い聞かせるように苦しげに言うので、声を上げて笑ってしまった。


私たちを照らす夕日が、地面に影を伸ばしてどこまでも続いていきそうな気がした。

その影を眺めながら、ふと気づく。

隣を歩く小太郎さんが、私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれていることを。
身長を考えれば、きっと本来はもっとさくさく歩けるだろうに。

少し前まではそんな小さな幸せに、気づきもしなかった。


「小太郎さん」

「ん?」

「今日、なにか作ります。うちに来ませんか?」

私がそう言うと、彼はふわりと笑った。
行くよ、という返事が聞こえるみたいに。


二つの影が寄り添う。

どこまでも、いつまでも────。









°・*:.。.おしまい°・*:.。.





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