箱入り娘に、SPを。
「美羽、そのうち小太郎さんとお付き合いなんてことになったりしてね!」
「……無理。警察官は、絶対に嫌」
「えー。なんで?警察官ってだけでかっこいいのにー」
もったいないとでも言いたげな梨花を無視し、私はラストスパートで今までよりもさらに速くエアロバイクを漕いだ。
─────恋をする相手が警察官は、嫌。
それは昔から変わらない。
だって父みたいに仕事仕事で家庭を顧みないだろうし、休みの日でもつねに仕事用の携帯を気にしていなければならないだろう。
デート中に抜けられるとか、そんなの耐えられない。
それに─────
「次はこちらのウェイトトレーニングでもしてみますか?」
やたらと長めの髪をサラサラと揺らすトレーナーの若い色黒のお兄さんが、エアロバイクを降りた私に気づいて声をかけてきた。
無駄に白い歯が気になってしまい、会話にあまり集中できない。
「えっ、ウェイト?」
「まずやってみましょうか!使い方教えますから」
「…は、はあ」
どこでホワイトニングしてるんですか?不自然です。
「美羽、早い!私もあとで行くねー!」
後ろから梨花の声が聞こえたので、私は振り向いて指で小さく丸を作り、待ってるねと手を振った。
「美羽ちゃん、ジムの利用は初めて?そうか、初めてか。じゃあ右も左も分からないよねー」
初対面で、ちゃんを付けるのか…。
いくらか嫌な感じはしたけれど、彼も仕事でやっているに過ぎないのだから気にしないことにした。
レッグプレスマシンに腰かけて、足を置くように言われたところへ足を上げる。
「これを蹴るように、ぎゅっと押して押して〜」
背中にトレーナーさんの気配を感じながら、言われた通りにするが力が入らない。
「ねぇ、美羽ちゃん」
話しかけられるけど、返事ができない。
息を止めて全身の力を足に集中させてるけど、動かない。なにこれ。重すぎ。
「美羽ちゃん」
途中で息を吐いて、ついでに返事をする。
「はい」
「いま、何歳?」
「えっと、二十五ですーーーーーねっ」
答えながらもう一度足に力を入れる。
…だめだ、全然動かない。
「若いねぇ。彼氏は?」
「は?いませんけどーーーーーーーおおっ」
再び足に力を入れてみたけど、なんなの本当に!動かなすぎる!
「髪の毛は伸ばしてるの?」
さっきからトレーナーさんの質問が普通に気持ち悪いという、酸欠気味の頭でも分かるような感情をどうしようか迷う。