箱入り娘に、SPを。
「ふぅ〜ん。で、新しいSPがあの人なのね」
「……うん、そう」
「あの人、この間しょっぴかれた時にいた人だよね?刑事さんだったんだぁ。パッと見わかんないもんだね」
エアロバイクにまたがって、重いペダルを漕ぎ続ける。
かれこれ数十分経過したのだが、その間に私と梨花は隣同士で雑談していた。
しょっぴかれたとか、なんか嫌。
そう言うと、梨花はペロリと舌を出した。
「あの時はたしかに私たちの意識は果てしなく低かったもんね」
「うん。危なかったと思う」
じんわり滲んでくる汗を、首にかけたタオルで押さえるようにして拭う。
さすがにそろそろ足がきつくなってきたので、あとどのくらい漕げばいいのか手元のモニターを注視していると、梨花が「ねぇねぇ!」と肩を叩いてきた。
「お姉さま方にナンパされてるよ」
「は?」
梨花と同じ方向に目を向けたら、チェストプレスマシンでトレーニングしていた小太郎さんが二人の若い女の子たちに声をかけられているのが見えた。
一人はTシャツの上からでも分かる巨乳、もう一人はショート丈のパンツからすらりと伸びる美脚の持ち主。
ここからでは何を話しているのかは分からないが、ほんのり笑顔で応対する小太郎さんに女の子たちはキャッキャしている。
「なにあれ。筋肉目当てってわけでもなさそうだし」
彼は警察官とはいえ、残念ながらゴリゴリのマッチョではない。むしろ細身である。
バカみたい、と呆れ返っていると、違うでしょと梨花が突っ込んできた。
「顔目当てでしょ」
「え?顔?」
「まあまあ素敵じゃない。とびきりのイケメンてわけじゃないけど整ってるし、背も高いし、愛想もいいし、ポイント高いよ」
「…………そうなんだ」
そばにいると、その人の魅力って伝わりにくい。
愛想がいいのは認めるが、逆に愛想がよすぎてなんか裏の顔がありそうと思ってしまう。
「私は!絶対!男の人は筋肉しか勝たん!だけど!」
と梨花が息巻いているのをよそに、私はあっちでよそよそしく女どもと話をしている小太郎さんをじろりと睨んだ。