箱入り娘に、SPを。
人生で初めての、痴漢被害かもしれない。
いや、自意識過剰で私の勘違いの可能性も無きにしも非ずだし…。
言い聞かせているうちに、その誰かの手はお腹のあたりから少しずつ上にのぼっていく。
慌てて、抱えている荷物を身体に押し当て、なんとか胸を死守する。
感じたことのない、ヒヤリとした感覚。
…怖い。怖い、怖い。
どうしたらいい?声を出す?助けを求める?
顔も動かせないこの満員電車で?
すると後ろで、スンスンと私の耳元でなにか匂いを嗅ぐような鼻息が聞こえた。
…あ、ダメだ。もう、恐怖で声が出ない。
たぶん、この時の私は顔面蒼白だったと思う。
誰か、助けて、小太郎さん─────!
「おじさん、現行犯ね」
ふっと聞こえたハッキリとした聞き覚えのある声で、一気に緊張が解けた。
いつどうやってこの場に来たのか、私の斜め前に小太郎さんがいた。
「えっ?」と私より先に、後ろの男性が間抜けな声を上げた。
その瞬間、私の身体に回されていた誰かの手が小太郎さんの素早い動きで拘束されたのか、ぐいっと人混みの頭上に掴まれた状態で取り上げられた。
私の身体には、もうあの気味の悪い動きをしていた手はない。
電車内の注目が明らかに小太郎さんが取り上げた手と、その手の主であろう中年男性に向けられている。
いや、自意識過剰で私の勘違いの可能性も無きにしも非ずだし…。
言い聞かせているうちに、その誰かの手はお腹のあたりから少しずつ上にのぼっていく。
慌てて、抱えている荷物を身体に押し当て、なんとか胸を死守する。
感じたことのない、ヒヤリとした感覚。
…怖い。怖い、怖い。
どうしたらいい?声を出す?助けを求める?
顔も動かせないこの満員電車で?
すると後ろで、スンスンと私の耳元でなにか匂いを嗅ぐような鼻息が聞こえた。
…あ、ダメだ。もう、恐怖で声が出ない。
たぶん、この時の私は顔面蒼白だったと思う。
誰か、助けて、小太郎さん─────!
「おじさん、現行犯ね」
ふっと聞こえたハッキリとした聞き覚えのある声で、一気に緊張が解けた。
いつどうやってこの場に来たのか、私の斜め前に小太郎さんがいた。
「えっ?」と私より先に、後ろの男性が間抜けな声を上げた。
その瞬間、私の身体に回されていた誰かの手が小太郎さんの素早い動きで拘束されたのか、ぐいっと人混みの頭上に掴まれた状態で取り上げられた。
私の身体には、もうあの気味の悪い動きをしていた手はない。
電車内の注目が明らかに小太郎さんが取り上げた手と、その手の主であろう中年男性に向けられている。