虚愛コレクション
自分自身に言い聞かせて平静を装っていたのだが、神楽君はどうしても気になったのかこんな質問を投げ掛けて来た。
「……祈ちゃんは、さ。透佳さんと付き合ってるわけ?」
花火の帰り友達を放って彼を追いかけた。話を誤魔化すために彼の話題をだした。
気にならない方がおかしいのかもしれない。
視線を何気なくメニュー表に落としてみたが、話題転換なんて出来る筈もない。
私を見て神楽君は質問してきているのだ。答えなければならない。
「――何それ。そう見える?付き合ってないよーー」
キュッと絞まった感覚がする喉から必死に押し出す。苦しいのは胸の奥も同じだった。
付き合っていないけど関係はそれ以上。嘘は吐いていないけど、嘘を吐いているのかもしれない。
神楽君の見透かされそうなその目に恐怖したのか、純粋に彼とちゃんとした関係じゃないと再確認したことに傷付いたのか。どちらにせよ、私は落ち着かない気持ちだった。
「ふーん、そかそか。何となくそんな感じかなって思ったんだけど違うのかー」
「そうだよ。あっちは大学生なわけだし、身の丈に合ってないでしょ?」
「でも珍しい話じゃないだろ」
と、何かを勘ぐっているのか。
これ以上突っ込まれても困る。隠したい気持ちなんてあるわけない。だって私は彼が好きだ。
けれど、隠さなければならない。私は“いい子”でいなければならないのだから。