虚愛コレクション
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じわじわと染みが広がるように恐怖が広がり、臆病にも彼と連絡を取れなかった。
もっとも彼からも連絡が一切ないので、ただただ平凡に1日1日が進んでいくだけだったのだが、ふと気が付いた時には10月も半ばになっていた。
彼とは、丸々1ヶ月ちょっと会っていない計算になる。短いような長いような期間。
このまま何もせずにいれば彼との縁も切れるのだろうかと考えていた最中での授業中、一度きりのコール。それが、彼からのコンタクトだった。
授業中である為に出れなかったのだが、それ以降のコールは暫く待ってみてもなく、少々画面を見つめていた。
「――……」
これは一体何なんなのか。暗に連絡しろと言ってきているのか。と悩んだ。
だが、何にせよ嬉しいと思う自分がいた。こう言う時、会いたいと思った時、同情心なのかがイマイチ掴めない。いや、彼といる時自体、全部の感情が何処から来るものかも分からない。
それでも確かな気持ちは杞憂を押しつぶしていて、この気持ちを無視できそうにはない。気付いたときにはコール音を聞いていた。
一回二回三回。何回目かのコールで彼は出た。
『もしもし?』