虚愛コレクション
電話向こうの彼の声を聞くだけで胸が高鳴った。久々に声を聞く。
「私です。祈です。こんにちは」
『分かってるよ。……こんにちは』
変わらないやりとりに酷く心が踊った。
「そうですよね」
『アンタは相変わらずそうだね』
早く直接会って話したいと心が焦れた。
「さあ、どうでしょう?透佳さんは変わらずみたいですけど。今日は久しぶりにそっちに行きますね」
気持ちが高揚して思わず笑みが浮かんだ。
この感情から感じる事は、私はこんなにも彼を想っている。想っているのだ。
馬鹿な女だろうか。神楽君や千代にこの関係を見透かされる事に恐怖を覚えているのに、敢えてバレる確率を上げるような真似をして。
それでも私は彼に会いたかった。
この気持ちだけは嘘も偽りもなかった。