虚愛コレクション


――


久々に来た彼の部屋は相変わらずで、必要最低限のもの以外置いていない殺風景なもの。変わってなんかいない。

まるでここだけ時が止まっているみたいだ。

開いた窓からは柔らかな風が吹き抜けて来ていて、心地よく感じられるものだった。ふわり、と風がまた鬱陶しく感じる程長い髪を撫でて、揺らす。

そしてそれを手に取ったのは他でもない彼。

珍しく、私の髪で遊ぶような仕草をしていたのだ。くすぐったい。


「透佳さん、私が来なくて寂しかったんですか?」


細く笑みを浮かべながら少し彼の方を振り向けば、後ろから抱き締めるように寄り掛かられる。

髪に触れていた手はいつしか腰に、残った手はいつしか頬に、唇に。羽交い締めにされているようになっていた。


「そうだね。寂しかったね。アンタとヤる方が一番イけるって分かったからね」


一言で多くの意味を含む聞き捨てならない言葉に、思わず笑みは消えた。


「透佳さん、それって…んっ!?」


なのに、彼は私に聞き返す事を許しはしない。

唇に触れていた指を徐に口の中に押し込んで来た。



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