虚愛コレクション
「……もしもし」
一言言ってほんの数秒で彼は耳から携帯を少し離した。うるさかったのだろうか、そのままの体勢でまた一言。
「今から?」
相手の声が大きくてうるさいのなら、設定を弄って相手の声を小さくすれば良いのに。と思っていると塞がれなくなった音が微かに漏れだした。
『今からじゃ駄目?』
甘ったるいような、高い、女の人の声。
思わずバッと顔を上げると、視線は行き場を失う。
「まあ、別に良いけど」
彼は見ていない。私を見ていない。
『じゃあ、いつもの所ね』
「ん」
と短く返答すると、電話を切った後、フラリと立ち上がった。