虚愛コレクション


マグカップを落とした時、冷静になり思わず唖然とした。そして自分を恥じた。こんな、醜いことしてどうなるのだ、と。

引き止めるような関係を望んではいけない。と。


「……ごめんなさい。ちょっとふざけました」


俯きながらなるべく明るい声で謝る。転がったマグカップを拾い上げテーブルに置く。

床を拭かなければとティッシュを取るために立ち上がり、彼の側に必然的に近寄ることになった所で、彼は私をソファーの上に突き落とした。


「っ!?」


片足はソファから離脱させられ、もう片方の足は立てられていて、彼は私の足の間に割って入るような体勢。それに一瞬にして切り替えられた。


「んっ?!何……えっ、ちょ、何す……っ~~!!」


指先が、コーヒーの掛かった太股に触れたかと思えばあろう事か、彼はそこに舌を這わせた。

ぬるりと湿ったそれが、肌をなぞる。足元からピリッとした熱が駆け上がった。


「っ~~!と、透佳さん、出ていくんじゃ……」

「選べばいいよ。俺にヤられるか、それとも他の人とヤりにいくのを黙って見てるか」


何て酷い言葉だ。此処で拒絶すれば彼は本当に行ってしまうだろう。選択など元からないに等しいではないか。

縋るように覆い被さる彼に手を伸ばして、首に腕を絡めた。

行かないで。などとは口にしない。返答のない答えだけで充分なのだ。

それだけでまた答えは返ってくる。


「んっ……!」


唇の端から細い人差し指が差し込まれた。


ああ、もう、これは依存だ。中毒だ。そして、それでも彼は私を選んでくれるのだ。

また、今日も悦に浸ってしまう。
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