虚愛コレクション


私が喋っても喋らなくても、神楽君はいつもの調子を崩しはしない。

これも、彼と私に良く似ていた。

しかし、私を透佳さん、神楽君を私に置き換えた時に限ったことなのだ。戻してしまえば神楽君は透佳さんにはなり得ない。

だって、彼なら先に私にベンチに座らせてクレープを買ってきてくれる事などない。


「はい、祈ちゃん、どーぞ」

「……あまそ」


何の要求もしなかったくせに、文句を付けるように苺とホイップクリームが乗ったそれに言葉を零す。


「れ?でも、前ファミレスでケーキ食べてたじゃん。案外癖になるつって」


そう言えばそうだったか。まあ、別に食べれるようにはなったし何でもいいかと口にクレープを運ぶ。

齧り付けば、柔いクレープの皮は容易く千切れて、溢れたホイップクリームの甘さと苺の酸味が口内を襲う。

ああ、本当に甘い。甘ったるい。それどころか。


「……っっ!!」


気持ち悪い。


「えっ!?どうした!?」


突然片手で口元を押さえて前屈みになる私にすぐさま気づいて、背中をさすってくれる。

気持ち悪い、気持ち悪い。何でこんなに甘く感じてしまうのか。

えずくことは無かったけれど、吐けるなら吐き出してしまいたかった。



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