虚愛コレクション
手を引かれるままに、歩き続ける。
肌を切るように通る冷たい風。それでも指先からは確かな温もりを感じる。
神楽君の手は思っていたよりも骨ばっていて、男の子の手だとすぐにわかる。
彼の手はどんな手をしていたのだろうか。きっと細くて女の人みたいなのかもしれない。
想像でしか語れないのは、手なんて繋いだことがないから。だって、いつだって彼は一方的に私の手首を押さえつけるだけだった。
「うーん、どこがいっかなぁ。あっ、クレープ屋来てる、あれ食べよあれ」
「っ」
ぐっと、更に力強く引かれてまた歩く速度は速まる。
力なく顔を上げてみれば、クレープ屋のワゴン車が来ているようで、車もメニューも暖色カラーで彩られたそれに目の痛みを覚えた。