虚愛コレクション
「気にしなくても案外誰も気にしないって。警察にも声かけられたことねぇもん。もし声掛けられたら逃げればいーんだって」
ククッと笑いを噛み殺し、私に向けて言う。
確かに、周りには道行く老若男女種々様々な人が居るけれど、見るからに学生である私たちの事を気になど止めていない様に思える。
只の雑踏の中の一人。
学校だと私も含めて、どうしても周りを気にしがちになってしまうので、少しだけこの街中が心地良い。
なんて、気にかけられる事に喜びを感じるくせになんたる矛盾だろう。
少しだけ自分自身に笑ってしまう。だが、今更だ。
結局私は相手を試すような事をしてしまう。
「ねぇ、神楽君日直だったんじゃないの?」
「それは久住さんがなんとかやってくれるって。また明日でも謝っとくし」
日常を放棄してでも私と一緒に居る事を選んでくれているのだと。
悪びれもしない様子に、性格の悪い気持ちを持ってしまう。