虚愛コレクション
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「ゲームセンター、ね」
「えーー?何ーー?」
呟いた自分の声は爆音に飲み込まれる。一つの空間に様々な音が入り組んでいて何となく忙しなく感じる。
私が落とした言葉を拾おうと神楽君は大声を出して聞き返してくれるも、その言葉を落としたままにしておく。
「何でもない」
先とは全く変わらない声量で、しかしながら意志だけは伝わるように首を横に振る。
確かに高校生にもなってゲームセンターには来たことは無かったけれど、こんな所楽しいのかと疑問に思う。
「あははっ!つまんなそーな顔!」
この騒音の中でもはっきりと言葉が聞こえるので、かなりの大声を出しているらしい。
顔にすら出ていた私の表情を指摘して一つの筐体に向かう。
「こんなの暇つぶしだって」
そう言って徐にお金を入れたかと思えば、手元のボタンを操作してアームを動かし始める。
中を覗けば、景品は犬のマスコットらしいけれど、正直言って可愛くはない。個人的な意見では欲しいとも思わない。
神楽君自身が欲しければ別なのだが、これが目当てではないのであれば言葉通り暇潰しなのだろう。
「ほらほら、祈ちゃんもやってみて!」
その暇つぶしに私も付き合えと言う事らしい。