虚愛コレクション
「っ!」
ゾッと背筋が寒くなる。何処か自分を見ているような感覚すら覚えてしまった。
駄目だ、神楽君の話を聞いてしまえば自分を重ねてしまう。
自分と同じだと思う事は今までだってあったのだ。
「かぐ、」
「祈ちゃん、僕はさっきみたいに短気に怒って、怖がって叫んで、千代と二人で居る時は屈託もなく笑う所、友達として好きだったよ」
話を終了させようとすれば、躱すように私にそんな事を告げてくる。
そうして、最初に見せた笑顔を私に向けた。
「でも、祈ちゃんがこの関係を望まないなら、この関係すら邪魔ならやめてしまおうか」
それは、表情に噛み合わない言葉。
「っ!」
思わず手を伸ばしかけたのは、見放されたと瞬時に感じてしまったからだ。
引き止める事など私には出来る筈がない。拒否して拒絶していたのにそんなのは都合のいい行動だった。
自らの手を引きとめて、一歩後ずさって、二歩、三歩と下がる。
「ははっ、変な度胸はあるのに、そう言うとこは臆病だよね」
一歩歩み寄って、二歩、三歩と距離が縮んだ。
「心配しなくたって、今まで言った事、嘘にはしないよ」
「なに……」
「友達も、恋人ごっこも終わりだ。だからさ、腹ん中、全部ぶちまけろよ」
友達だと、何も語らない私。恋人だと、それ望まない私。
また、神楽君は私に合わせてくるのだ。他人ならどうだと。彼に近しくなればどうだと。