虚愛コレクション
奥のリビングから戻ってきた彼の手には小型のドライヤーがあり思わず目を丸くした。
「……ドライヤー、持ってたんですね」
率直な感想を漏らしながら渡されたそれを手にした。続いて渡された彼のであろう服も受け取る。どうやら気にはかけてくれているらしい。
「誰かの忘れ物。……あと、乾燥機じゃすぐ乾かないだろうからそれ着とけばいいよ」
「誰か……?」
更にお礼を言うよりも前に、言葉に反応してしまった。
誰か。とは、一般的に言えば彼女と名目してもいい程の関係の人の事だろうか。
なのに彼女と言わない辺り、好きでは無かったのか。私のような関係だったのだろうか。私は一体何番目か。
冷えきって下がるはずのない体温がまた下がった気がした。
「……――」
脳内で勝手に巡らせた想像だったのに、急に悔しくなり去ろうとした彼を引き止めた。
私が特別などとはこれっぽっちも思っていなかったのに。
「――透佳さん。足痛くて此処だと靴下が脱げないので、浴室まで連れていってください。部屋、汚すの嫌ですよね?」
こんなことは彼からしたら子供の行為かもしれない。いいや彼からしたら私なんて元々子供だろう。
「足痛い、ね……」
何かを勘繰るような呟きにドキッとした。本当に勘繰っているのかはやはり読み取れない。