虚愛コレクション
何にせよ、半分が嘘だと気付かれていたとしても、だ。
ふわりと体が持ち上げられた事は、私の揺るぎない自信になる。この人はまだ、私を見捨てない。私にはまだ価値がある。と。
なのに。
「……は?」
彼の見た目に反しながらも、軽々と持ち上げられた迄は良かったのに、下ろされた先はよくなかった。
玄関に備え付けられた下駄箱の上。高さは彼の腹部ほど。何故そんな所なのか。
「……ほら、早く脱いだら?」
答えはこれ。
揚げ足を取られたのだ。何て巧みな。立ちながら脱げないならば、座らせればいい。それが彼の回答なのだろう。立っている以上、歩けないわけではないと。
実際そうなのだが、やはり彼を思い通りにするなど出来ないらしい。
「……透佳さんってかわすの上手いですよね」
「アンタが読めやすいタイプの人間だからね」
誤魔化しなどはしない。完敗なのだ。
「何でもいいから、さっさと脱いで」
負けたことに対して、はぁ。と溜め息を吐いている間に、靴下のゴム口に手を掛けられていた。肌に軽く爪が立った。それよりも。
「っ、」
身構えていなかった為か、足に触れた細い指に意に反してピクリと体が跳ねた。