虚愛コレクション


何にせよ、半分が嘘だと気付かれていたとしても、だ。

ふわりと体が持ち上げられた事は、私の揺るぎない自信になる。この人はまだ、私を見捨てない。私にはまだ価値がある。と。

なのに。


「……は?」


彼の見た目に反しながらも、軽々と持ち上げられた迄は良かったのに、下ろされた先はよくなかった。

玄関に備え付けられた下駄箱の上。高さは彼の腹部ほど。何故そんな所なのか。


「……ほら、早く脱いだら?」

答えはこれ。

揚げ足を取られたのだ。何て巧みな。立ちながら脱げないならば、座らせればいい。それが彼の回答なのだろう。立っている以上、歩けないわけではないと。

実際そうなのだが、やはり彼を思い通りにするなど出来ないらしい。


「……透佳さんってかわすの上手いですよね」

「アンタが読めやすいタイプの人間だからね」


誤魔化しなどはしない。完敗なのだ。


「何でもいいから、さっさと脱いで」


負けたことに対して、はぁ。と溜め息を吐いている間に、靴下のゴム口に手を掛けられていた。肌に軽く爪が立った。それよりも。


「っ、」


身構えていなかった為か、足に触れた細い指に意に反してピクリと体が跳ねた。


< 50 / 288 >

この作品をシェア

pagetop