虚愛コレクション
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放課後になって私は千代と神楽君と対面していた。二人並んで見るのは勿論これが初めてで、やっぱり未だに双子だとは信じきれず、変な気持ちだった。
「……って言うわけで。ごめんね、神楽が名乗らないから祈に大変な思いさせて」
「ううん。全然大丈夫だよ」
勿論怒っているわけではなかったので、気にしていないのだが逆に神楽君が口を挟む。
「ちぃ自分の事は棚にあげんだー?」
「う……」
自分の事。とは、私が鈴の音がしたと言った後、もしかして神楽君かもと思ったのに何も言わなかった事に値する。
手間を掛けさせたと散々謝られたのだが、鈴の音だけで人を判断するのは難しいので、気にしてはいなかった。
「別にいいよ神楽くん。千代を責めないであげて」
「祈ちゃんがそう言うならいーけどさーあ。……あ、」
不意に神楽くんが声をあげて、目を止める。その目線の先を追えば西君がいた。
現在私のクラスに神楽くんがいる状態なので、西君が目線の先にいてもおかしくない。
おかしくない……のだが。それにしたって、ジッと西君を見ている。
「神楽君?」
「か、神楽……?」
私と千代の声に反応もしない。それに何か嫌な予感でもしたのか千代はヒクリと喉を鳴らして神楽君の肩を掴んだ。
掴まれた本人は気にも止めず、ニンマリ笑みを浮かべて声を上げ、更には手も上げた。
「にっしくーん!」
と。それはもう実に陽気に、実に親しげに。多分初対面の筈なのだが。