雨宿り〜大きな傘を君に〜

最近寝不足だという言い訳が通じるはずもないだろう。塾に通うみんなが寝不足のはずだ。


「これ飲んで、授業に行け」


机の上に、コンっと缶珈琲が置かれた。


「え…」


「僕からだって言わないように。色々うるさいからな」


「は、はい、ありがとうございます」


缶珈琲を手に取ると、熱く、彼が今買って来てくれたことを悟る。


嬉しい。


私のために菱川先生が自販機で買って来てくれた。想像するだけで、元気が出た。



「これ飲んで、今日も頑張ります!」


私の言葉を最後まで聞かずに席に戻った菱川先生だったけれど、そのそっけない優しさに心が温かくなった。

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