雨宿り〜大きな傘を君に〜
授業を終えて外に出ると、曇天が広がり雨が降る臭いがした。
それでもアパートが見えてくる頃まで雨は降り出すことなく、安心した刹那ーー
バッグを掴まれた。
嫌な、予感がした。
「大野ん家、そこ?」
「……」
振り返らずも分かるその声に、動けなかった。
後少しだけ待ってくれれば、家だったのに。
大粒の雨が、肌に触れる。
「上がってもいい?」
「お母さんがビックリするから、止めてください」
「え?いいじゃん。お母さんにも挨拶させてよ」
崎島に顔を覗かれる。
顔に彼の息がかかり、どうしようもなく泣きたくなった。
大丈夫。例え目から雫が垂れたとしても、崎島は雨だと思うだろう。
「お願い、離して」
「嫌だよ」
「お願いします…」
お母さん…助けて。
そう心で叫んでもなにも変わらないことは、分かっていた。