雨宿り〜大きな傘を君に〜
先生の目が大きく見開く。
私のことを軽蔑すればいい。
地面に転がったそれを、目の前から消し去りたくて、なかったことにしたくてーー
スニーカーの踵を上げて、力のままに
踏み潰した。
チョコレートが割れる感触がして、
「あはは」
再び笑いがこみ上げてきた。
母が誇れる私に?
お母さん、私はそんな立派な人間にはなれないみたい。
人として最低なことをした。
「なにをしたか分かってる?」
分かってるよ…。
無残な姿になった贈り物から、私へと視線を移した菱川先生の目は、冷たかった。
崎島と鉢合わせしたあの日と同じ目をして
菱川先生は、
手を上げた。
「…ッ、」
頰に衝撃が走る。
叩かれたと悟った時、もう笑えなかった。
ごめんなさい。
殴られた頰よりも、殴ったあなたの手が何倍も痛いと知っているのに、
私は泣かずにはいられなかった。