雨宿り〜大きな傘を君に〜
ーー俺も、ハナちゃんが好きだよ。
聞きたくて、聞きたくない言葉だった。
「同情でしょう……」
声が震える。
「違う、同情じゃない。本心だよ」
真っ直ぐな目が真剣に伝えてくれる。
ーー本心。
ああ。
私は、先生にここまで言わせてしまったのだ。
「あはは」
笑える。
「ハナちゃん?」
おかしくて仕方ない。
私のことを好きでもないくせに。
私のために"好き"だと言ってくれて。
お人好しすぎる。
喜ぶとでも思った?
まさに今、自身の人生を犠牲にして私に尽くしてくれようとしているあなたを前に、心から喜べるとでも言うの?
「ホント、笑える…貸して」
いきなり笑い出した私を困った顔で見つめていた先生の手から、バッグを奪い取った。
すんなりと先生の手から離れたバッグのファスナーを開ける。
隙がありすぎるよ、先生。
「ハナちゃん?なに?」
あった…。
佐渡先生からのチョコレートが、バッグの中に入っていた。
「無いことを信じてたのに。なんで、あるのよ…」
紙袋ごと、引っ張り出し、
私はそれを
地面に投げ捨てた。