雨宿り〜大きな傘を君に〜

簡単なものでごめんね、なんて言いながらシチューを作ってくれた。

なるべく料理をするようにしていたけれど、誰かの手料理なんて久しぶりで、優しい味に泣きそうになった。

高ぶる感情を抑えるように、ご飯をゆっくりと噛む。


「先生、すごく美味しいです」


「良かった。一応、俺が料理担当なんだ」


「そうなんですね」



ん?料理担当?
他にはどんな担当があるのだろうか。

どこまで深入りしていいか分からず、質問しずらい。


「といっても、緒方さんは出掛けることが多いから、ひとりだとコンビニ弁当だけどね」


「緒方さんとよく一緒にご飯食べられるんですね」


菱川先生は他の先生とも一線を引いているように見えていたから、少し意外だ。飲み友達かな。その緒方さんとはとても気が合うのかもしれない。



「あ、そっか。そうだよね。俺、"ここ"に居候してるんだ」


「居候!?」



突然に投下された爆弾発言に、慌てて箸を置き、先生を凝視する。


つまりそれって…。

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