雨宿り〜大きな傘を君に〜

案内された部屋は、使われていないようではあったけれど綺麗に掃除されていて、ふかふかの布団付きのベッドもある。

勉強机も、本棚もある。


「私、ベッドで寝るの初めてです」


嬉しくて、大の字で寝そべる。


「寒くない?暖房を入れようか」


「いえ、大丈夫です」


「それじゃぁ明日9時に、君の家に行こう。午後には緒方さんも戻ってくるからね」


「ありがとうございます」


「俺は向かい側の部屋にいるから。なにかあったらすぐに来てね」


そっと布団をかけてくれた。
毎日母がそうしてくれたように。


そして「おやすみ」と言って、電気を消してくれた。


「おやすみなさい」


「ゆっくり休んで」


寝る前に挨拶する相手がいて、今夜の私は幸せで。幸せすぎて、少し怖い。

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