雨宿り〜大きな傘を君に〜
翌朝。
乾いた制服を着て、リビングに向かう。
寝起きの顔を見られたくなくて、持ち歩いていた道具で最低限のメイクをした。
「おはようございます」
「おはよう。ゆっくり眠れた?」
「……え、」
無造作ヘアーにしわしわのYシャツ。
顔立ちが綺麗な分、もったいないとは思っていたけれど、今朝の先生は違う。
眼鏡を外してワックスで程よく整った髪に、しっかりアイロンがかけられた淡いブルーのYシャツと、グレーのスラックスを履いていた。
街を歩いていたら、女の子たちの視線を集めてしまうことは確実だ。
「朝ご飯はパンでいい?」
「はい。先生、雰囲気違いますね」
思わず見惚れてしまっていた。
「女の子と出掛けるんだから、少しはね」
「私ですか?」
「可愛い君の隣りに立つ男がダサいと、ハナちゃんが恥ずかしいでしょ」
パンをトースターに入れながら、先生はさらりと言った。