雨宿り〜大きな傘を君に〜
テーブルの上に並べられたジャムを見つめる。
可愛い君?
そんなこと言われたことないから、ビックリした。
だから、お返しだ。
「先生がカッコ良くて、驚きました」
まぁ言われ慣れてると思うけど。
「それに先生が伊達眼鏡をかけている理由も分かりました。そんなにカッコいいと、生徒たちがうるさいですもんね」
ただでさえ若い講師は人気なのだから。
恋をしたと錯覚した生徒は手に負えないし。
「ありがと。少し照れるけど」
爽やかな朝にお似合いの嫌味のない笑顔。
「さぁ、コーンスープもあるから座って」
「ありがとうございます」
ソファーに座る。
菱川 托人(ひしかわ たくと)。
もっともっと彼のことを知りたいと思ってしまう。
ダメだ。
少し優しくされたくらいで、彼に踏み込むことは止めよう。
人には言いたくないことが沢山あるのだから。