雨宿り〜大きな傘を君に〜
首から手が離れていった。
そうだよね、傍に居てなんて言われたら普通に引くよね。
弁解しようと開きかけた口は、先生の言葉によって遮られた。
「ずっと傍に居るよ」
「先生…」
優しく頭を撫でられた。
何回も何回も撫でてくれた。
その大きな安心できる手に、守られているような気分になって、
「泣いてもいいですか…」
彼の手が、母の手と、重なった。
「もちろん。無理に笑う必要なんて、ないんだよ」
穏やかな声に、もう我慢ができなかった。
初めて人前で泣いた。
葬儀の際も、しっかりした子だと思われたくて涙目ではあったけれど泣くことを我慢したし、
それからも天国から母が見ているからと気丈に振る舞った。
そんな私のことなんて、きっと菱川先生は何ひとつ知らないのに。
あなたの前では弱い自分を隠せずにいられたんだ。