雨宿り〜大きな傘を君に〜
レジ横にあった綺麗な栞と一緒に包んでもらう。
参考書を見に行くと言って2階に上がって行った先生は、授業の参考にでもするのだろう。
邪魔しないようにと階段の下で待つ。
なんて素敵なクリスマスなのだろう。
昨年は病院で母と過ごし、クリスマスらしいことはなにひとつできなかった。申し訳なさそうな母とまた来年、そう約束していたけれど。その願いは叶わなかった。
それでも母が傍に居てくれたことが、なによりも素敵なプレゼントだったと今なら分かる。
もう高望みはしないから、クリスマスプレゼントなんていらないから、ーーそう思っていたのに。
私の右手には紙袋がある。
どうして彼は私に与えてくれるのだろう。
菱川先生、私はモノを与えられるよりもアナタが傍に居てくれる方がずっと、嬉しいの。
そう打ち明けることは難しい。彼にそこまで背負わせるわけにはいかないから。
他人の子供の世話を、いつまでも焼かせるわけにはいかない。
「お待たせ」
「いえ」
階段を駆け下りてきた先生に、なんともない顏で返事をしたつもりだけれど、
「どうした?」
あなたは見落とすことなく、気付いてしまうんだ。