雨宿り〜大きな傘を君に〜

崎島のことも最初は本当に怖かった。
あの雨の中、泣くほどに怖かった。
でも今は先生が居てくれるから、それほど深刻に悩まずにいられる。


「それって殺し文句だよね」


「はい?」


「もしかして遠回しに俺が好きって、告白してる?」


「違います!」


呑気に聞いてくるもんだから、即座に否定する。



「残念。まぁもっと俺のことを知ってよ」


いつもの穏やかな空気が戻ってきた。


「君に隠して不信感を抱かせるようなことはしたくない。だからハナちゃんが知りたいことがあったら全部、話すよ。君も言える範囲で良いから、なんでも話してね」


「はい」


有明 沙莉さんのことが気にならないと言えば、嘘になる。緒方さんのルールがなければ真っ先に聞いていただろうけれど、家主の許可が出ない以上、聞けない。


「ケーキ買いに行こうか」

「はい!」


微笑み合う。
限られた時間の中で、どれだけ幸せで在れるか。
それは自分次第だ。

だから先生の前では笑っていたいな。

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