心の中に奏でる、永遠の向日葵
土曜日、俺は心が弾む気持ちで、向日葵の家に向かった。
単純すぎる。こんなのじゃ、完全に単純でバカな男子高校生ではないか。
実際、そうなのかもしれないが。
向日葵の家に着くと、珍しく向日葵が外に出ていた。
「向日葵!」
俺が声を掛けると、向日葵は俺の方に顔を向けないが、にっこりと笑った。
「来た来た。なんとなく、もうすぐ来るんじゃないかなって思ってさ」
「もう、パターンまで読まれてるのかよ?」
「えへへ。すごいでしょ」
向日葵が、白杖をついて歩き出す。俺も、ぴったりと横をついて歩き始めた。
少し調べたら、コンクールは岸田文化ホールという、大きなホールで行われるらしく、とても歩いて行ける距離ではないので、たぶん電車に乗るのだろう。
「向日葵、コンクール会場には、電車で行くんだろ?」
「うん。なんだ、調べてきてたんだね」
俺が知らなかったら、電車賃はどうしてたんだ、と思ったが、そこはなにも言わないでおく。
岸田文化ホールのがある場所といえば、俺たちの町においては、かなりの大都市だ。
そんなところに、向日葵は行けるのだろうか。