心の中に奏でる、永遠の向日葵



土曜日、俺は心が弾む気持ちで、向日葵の家に向かった。
 

単純すぎる。こんなのじゃ、完全に単純でバカな男子高校生ではないか。

実際、そうなのかもしれないが。
 

向日葵の家に着くと、珍しく向日葵が外に出ていた。
 

「向日葵!」
 

俺が声を掛けると、向日葵は俺の方に顔を向けないが、にっこりと笑った。
 

「来た来た。なんとなく、もうすぐ来るんじゃないかなって思ってさ」
 
「もう、パターンまで読まれてるのかよ?」
 
「えへへ。すごいでしょ」
 

向日葵が、白杖をついて歩き出す。俺も、ぴったりと横をついて歩き始めた。
 

少し調べたら、コンクールは岸田文化ホールという、大きなホールで行われるらしく、とても歩いて行ける距離ではないので、たぶん電車に乗るのだろう。
 

「向日葵、コンクール会場には、電車で行くんだろ?」
 

「うん。なんだ、調べてきてたんだね」
 

俺が知らなかったら、電車賃はどうしてたんだ、と思ったが、そこはなにも言わないでおく。
 

岸田文化ホールのがある場所といえば、俺たちの町においては、かなりの大都市だ。

そんなところに、向日葵は行けるのだろうか。
 



< 258 / 398 >

この作品をシェア

pagetop