心の中に奏でる、永遠の向日葵
「え、どういうこと?」
「いや、向日葵があんまり楽しそうに演奏するから、こっちまで移っちゃったんだよ」
すると、向日葵はまた頑是ない無邪気な笑顔を浮かべた。
「理由なんかどうだっていいんだよ。どうであれ、演奏中に感情が持てたんだから、それでいいの」
向日葵はそれだけ言うと、白い杖を前で叩きながら歩き出した。
どこに行くのだろうと思ったら、窓際の低い棚の上に座って、顔を窓に預けた。
「よかった。大きな進歩だよ…」
まったく…。
一体、なんで向日葵はこんなに、他人の事で喜んだり、安心したりできるんだろう?
一見、自由奔放に見える彼女だけど、本当はとっても優しい女の子なんだ。
「…向日葵、今日、クラスメイトの前でピアノを弾いたんだ」
俺は足を抱え込むと、口を開いた。
向日葵は無言だ。
あんまり大きな声では言えなかった。でも、向日葵にはきちんと届いているだろう。
なんたって、並外れた聴力を持ってるんだから。