好きだから傷付ける

美空「鬼藤くんの喧嘩に巻き込まれた日
私の事、おぶってくれたよね?
その時にね、思ったんだ。
この人の事を悪者にしたくないなって。
結果的に鬼藤くんには迷惑かける事に
なっちゃったけど、不思議と私は
後悔してないんだ。鬼藤くんとは
関わりたくないって思ってたのに。」

雅來「そんな風に思ってたのかよ。」

少しずつ、いつもの鬼藤くんが
戻ってくる。
それは喜びに近い感情だった。

美空「でも今ではあの日あの場所にいて
良かったなとさえ思えるんだよ。
鬼藤くんの優しさ。笑顔。悲しむ顔。
悩む顔。守るって言ってくれた時の表情。
全部この目で確かめる事が出来た。
私ね、鬼藤くんの事が好きなんだ。
いっくんに反対されてもさ
世界中の皆に反対されてもさ
一緒にいたいって思っちゃうんだよ。
だから、もう1度私の事を
好きになってくれませんか?
もっともっと頑張るから。
鬼藤くんに相応しい彼女になるから。
私と付き合って下さい。」

精一杯の言葉と精一杯の行動だった。
鬼藤くんに向かって差し出した手を
握り締め、鬼藤くんは私の事を抱き締める。

雅來「ふざけるな。
滝川は世界で一番大切にしたい女だ。」

鬼藤くんの胸の中で私は泣いた。
嬉しくて、ただ嬉しくて
涙しか出て来なかった。
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