好きだから傷付ける
水道の音に掻き消された私の声は
きっと鬼藤くんには届かない。
それでいい。こんな事を言ったら
その瞬間に嫌われてしまうかもしれない。
滝川って意外と重いんだな。
とか、言われたら立ち直れない。
好きって怖いんだな。
真由さんの気持ちが
ほんの少しだけ分かった気がする。
好きになればなるほど臆病になる。
怖くなる。いつかいなくなる日を
想像すると...言葉一つ伝える事さえ
怖くなる。失敗したくない。
そう思ってしまう。
ああ、ダメだ。また泣いてしまいそうだ。
涙を誤魔化そうと天井を
見上げると、いつの間にか
鬼藤くんがいた。
雅來「ならないよ。」
美空「え?」
雅來「滝川の事、嫌いになんて
ならないから。」