時のなかの赤い糸


「局長……」



板橋の斬首場に座った近藤の姿が見えた。



永倉は何ともないような表情をしているが、遥と繋ぐ手はギュッと握られていた。



近藤は




優しい表情をしている。

出会った日と変わらぬ優しい表情。




この表情にどれほどの人が助けられたか



「武士なら武士らしく、切腹にしたらええのに」



誰かがそう呟くのがわかった。



「あの人はあるいみ最後の武士だったんだろうな」


その声に便乗して、ポツリポツリと言葉が上がってきた。



役人が睨みをきかせているからそれほど目立つものでもないが


いつの間にか遥達はその声に包まれていた。



新撰組がやって来たことは無駄なんかじゃなかった。




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