時のなかの赤い糸


自室には永倉の姿がなくて、しょうじを閉めると中庭から声が聞こえた。



「なんかよう?」




振り向くと永倉が中庭に立っていた。




「…永倉さん……」



「誰を大嫌いだって?」




木刀を振りかざしながら月明かりのなか永倉は横目で遥を見た




(恐っ)



遥は冷や汗を流しながら「ごめんなさい」と言った



「謝んなくていいよ。
俺も俺だし」




木刀を下げた永倉は、廊下に足を出してドカッと座った




「隣、座れば」




永倉に言われて少し離れて座ると、



グイッと永倉に手を引っ張られた。



「ひゃっ」




次の瞬間には遥の顔と永倉の顔の距離は、あり得ないくらい近かった。




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