時のなかの赤い糸
遥は稽古場に戻ると、永倉の姿を探した。
永倉は、沖田を相手に稽古をしている。遥はそれだけを確認して一人で稽古を続けた。
(鬼の副長か…)
歴史の先生が言ってた事を思い出して遥はフッと笑った
「綾野」
呼ばれて振り返ると永倉が木刀を遥に向けていた。
「稽古だ」
まるで敵を見ているような目で遥を見つめた永倉に、遥は戸惑いながら頷いた。
(夫婦喧嘩…?)
周りで見ていた隊員たちは、そんな風に永倉と遥を見た。
遥の木刀が大きくふりかぶって永倉の肩に落ちる瞬間、永倉の木刀がそれを食い止めた。
(早い…)
歯を食いしばって永倉の行動ひとつひとつ見つめた。