あなたの名前は忘れたけれど。
我輩は猫である。

名前はまだない。


どこかでそんな事を言われた。

まるでお前のようだと、窓から見下ろす毛の長い奴に言われた。


俺は好きで自由を選んだ。


首輪に何の価値がある?


決まった路地裏。

ゴミ袋の山。

塀の上。


そして、あの子の家のベランダ。


「あら、また来たの」


ニャア、と鳴くとあの子が出てくる。


名前も知らない女の子。

女の子と呼ぶには、ちょっと違うかもしれないけれど。


いつも俺に美味い飯をくれる人間。

俺がこのベランダに来るのは、それだけの理由。


…それだけだ。
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