あなたの名前は忘れたけれど。
そんな先輩が、最近捕まった若い男にしょっちゅう会いに行っている。


ロミオとジュリエットかよ。


透明の壁一枚隔てた無機質な部屋の中で、犯罪者と顔を合わせて何を話すんだろうか。


「俺は薬物に手ぇ出す時点で…負け組だと思うんだけどなぁ……」


フゥーと吹き出したタバコの煙。

モクモクと宙へ浮かんで消えてゆく。


ぼんやりとそれを見ていると、喫煙室の目の前を先輩が歩いて行くのに気付いた。


吸いかけのタバコを投げ捨て、俺は喫煙室を急ぎ足で出る。
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