キンダーガーテン四   ~私の居場所に~
ザッと打ち寄せる波の音を聞きながら

車の中で手を繋ぐ二人。

「唯ちゃん、ここなら大丈夫だから………泣いて良いよ。
俺しかいないから。
俺も…………暗くて見えないからね。」って………。

どうして……………先生には……………

何でも分かるのかな??

幸せだし……………悲しい事なんて………何もないのに………

胸がギュッと締め付けられるように

苦しくなる瞬間があるって事を。

居場所だって出来て、実家だって無くならないし………

みんなに祝福されて…………。

家族だって、みんな幸せになった。

不安な毎日から解放されたのに………

「良いよ。」って言われた瞬間から

涙が止まらない。

この涙が、何の涙かすら分からないのに

後から後から、こぼれ落ちる。

先生は『良いよ。』って言ったきり、一言も声を出してないの。

ここには、唯しか存在しないような静けさ。

それでも一人じゃないよと伝えるように

右手だけは、そっと握ってくれたまま。

ハラハラ落ちる涙は………

どれくらい溜めていたのかと思う程、流れていく。
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