届かない想い・愛される喜び
花恋・・か・・
確か‥‥24才になったかな
俺より5才下だったはず。
真理亜さんと和真さんは、
俺の家の隣に住んでいた・・・
花恋は、そんな二人の一人娘だ。
とても可愛い子だった・・・
そんな花恋を俺は、
大事に慈しみながら
可愛がっていた。
花恋が産まれてから
俺は、毎日葉山家に行き
一日中花恋を眺めていた。
ずっと見ていても
飽きることはなかった。
そんな俺に、和真さんは、
「海音、花恋が可愛いか?
大事にしてくれるなら
海音になら花恋をあげても
いいぞ。」
「和真さんっ、ほんと。
本当に、僕のお嫁さんに
花恋をくれるの?」
「ああ、約束だ。
だがな、花恋を泣かせたら
たたじゃすまないぞ。」
「うん、大丈夫。
僕、花恋が大好きだから。」
そんな約束を
遠い昔にした・・・
あはは・・昔の話だ・・
花恋は・・
・・海音お兄ちゃん
海音お兄ちゃん・・・と
いつも俺の後ばかり
ついて廻って本当に可愛かった。
だが・・・
俺が葉山家に入り浸っていたのも
小学校3、4年までで
高学年になるにつれ
友達といることが楽しかったり
部活動に入ったりで
段々と花恋の事など
忘れていった。
あんなに可愛がっていたのに‥‥‥
小学校の間、花恋は、
毎年バレンタインのチョコをくれた。
花恋がチョコを真理亜さんと
一生懸命つくってくれて
恥ずかしそうに
真っ赤になって渡してくる
それが、可愛くて
花恋に
「ありがとう」
と、言って受け取っていたが・・・
俺は、自分が中学生になると、
「あっ、花恋チョコだろ?
部屋に置いといて」
「チョコか?適当に置いといて。」
「ああ、机の上に。」
「はぁ・····」
段々、煩わしくなっていき・・
高校になると······
「····またか·····」
「母さんに渡しといて」
「············イラナイノニ」
直接受け取ることは······なかった·····
それでも、毎年
俺の部屋には、チョコレートが
置いてあった。
直接受け取らない俺に花恋が
どんな想いをしていたか
・・・・考えてもいなかった・・・
花恋が高校に入った年
バレンタインには、チョコ。
俺の誕生日にはプレゼントが
置いてあるようになった。
その時、俺は21才で
大学三年、インターンシップに
忙しい時期だったし
彼女もいた。
隣なのに中々
会うこともなかったので
葉山家に電話をして
「もしもし、海音だけど
チョコも誕生日のプレゼントも
ありがとうな。
だけど、花恋
俺のために時間を使ったり
お金を使う必要ないから
年相応の男の子達に
あげた方がいいんじゃないか。」
と、言って切った。
そのとき、花恋から
「‥‥‥ごめんなさい‥‥」
と、いうのが聞こえた。
俺は、その夜
母さんにひどく嫌みを言われた
記憶がある。
俺のプレゼントを買うために
花恋はバイトをしたらしく
「あんた、なんで
あんな事言ったの。」
と、ブツブツ言われたな。
父さんも母さんも
花恋を凄く可愛がっていたから。
次の年から
花恋から一切なにもなくなった。
当たり前だろうが・・
さすがに少し寂しかったのを
覚えている。
翌年の誕生日は
友人や彼女に
祝って貰い帰宅すると
たまたま、帰ってきた花恋と
家の前でバッタリと会った
花恋は、俺を見て顔を反らしながら
自分の家へと入って行った。
俺は、兄としての役目が終わったのだと
改めて思った。
あの時・・・
母親からブツブツ言われた事もあり、
花恋からもらったプレゼントを
開けることなくクローゼットに
放置した。
そんな俺が・・・
・・花恋の辛さや悲しさを・・・
・・知るよしも・・なかった・・