彼・・・私の天使。

2


「分かってるわよね。詩織を泣かせたら許さないから」
 玲子に言われ

「良く分かってます。生涯大切にしますから」
 と天使が微笑む。

「そんな密談いつしてたの? 前にも聴いた気がするけど……」

「内緒よね。ところで……。私もウェディングドレス着ることになりそう」

「えっ? どういう心境の変化?」

 式は挙げないって言っていた玲子が……。

「一度くらい着てもいいかなって思って。彼も、きっと綺麗だよって言ってくれてるし」

「私もそう思う。そろそろ彼の傍に居てあげたら? やっぱり好きな人の傍に居るのが一番幸せだと思う」

「うん。そうしようと思ってたところ」
 玲子の笑顔は輝いていた。

「本当は誰よりも可愛い女なんだから。私しか知らないと思うけど」

「大丈夫よ。彼は知ってるから安心して」
 はにかむ玲子は頬を薔薇色に染めた。

「それは、ごちそうさま。玲子、幸せにね」
 心から願っていた。

「詩織もね」

 四十路女二人は生涯の同居人になることなく幸せをつかんだ。


 ハネムーンは彼が四月に入ると舞台の稽古が始まるので、まとまった日にちが取れなくて、北海道へ一泊二日で彼女の大好きなお鮨を食べに。勿論お支払いは彼に任せて。



 結婚が報道されても彼の演技を高く評価する女性ファンは多く、彼の人間性の素晴らしさに男性のファンが増えて来ているとワイドショーで言っていた。人気が出て糟糠の妻を捨てる芸能人はいくらでもいる世界……。


 五月の劇団の公演での演技力も広く認められドラマにCMに彼の仕事は行き詰まることもなく順調で、詩織も忙しい仕事を少しだけセーブして信頼出来るスタッフに任せ、主婦業も疎かにはしなかった。

 そして瞬と詩織の二人だけの甘~い毎日が変わることなく過ぎて行き……。



 一年後……。詩織は天使にそっくりな可愛い男の赤ちゃんを母子共に健康で無事出産した。


 瞬は思ってもいなかった最高のプレゼントに可愛い顔をほころばせながら
「ありがとう。詩織。僕は世界一幸せだよ」
 彼女に心から感謝していた。



 パパが天使で、赤ちゃんも生まれたての背中に羽が生えていそうな天使で……。



 長い間たった一人で生きてきた彼女は、この先、美しい笑顔が絶えることはなさそうです。

 二人の優しい可愛い甘えん坊な天使に生涯、愛されて……。





   ~~ 完 ~~

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