上司との同居は婚約破棄から
「す、すみませんでした。
知らなかったとは言え、様々な非礼な振る舞いを……。」
私は慌ててテーブルに手をついて謝った。
厳しいの『き』の字も見せない伊織課長は柔らかな雰囲気を纏っている。
「いいの。いいの。
知らなかったんだから。」
知らなかったとはいえ、プラシデス社の若きツートップと揶揄されるお二人に……。
その後は心の中では怯えつつも和やかな食事会が進められた。
私もお酒をいただいてほろ酔いでいい気分だった。
お皿を片付けていると愛梨さんもキッチンの方へ歩み寄ってきた。
「酔っても片付け出来る方?」
「えぇ。割と平気です。」
「そういうところ、分かってたんじゃないかな?」
「え?」
愛梨さんの視線の先に目を移す。
そこには高宮課長が伊織課長と戯れ合って……というよりも纏わり付かれて煩わしそうにしていた。
「俊哉くんのこと仕事で接してるからよく知ってると思うけど。
甘えたり出来ないタイプでしょ?
だから自分みたいになって欲しくなくて藤花ちゃんを保護するみたいにお世話してたんじゃないかな。」