キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
穏やかな眸だった。
揺るぎない強かさを秘めた声だった。

校則だの交通ルールは平気で破るクセに、筋が通らないコトや半端は大嫌いだったから、お兄ちゃんは。
ミチルさんも。最後まであたしに優しい嘘を吐きとおすんだろうって。
引き返す道なんて、最初から作ってないだろうって。

・・・分かってたけど。
胸の内で細く息を逃した。
伏せ目がちにしたのを、もう一度ミチルさんを見上げると、そっと口許から掌が離れた。

「・・・りっちゃん、僕は」

今度はあたしが伸ばした指でミチルさんの唇に触れ、言いかけたのを留める。

「ミチルさんが悲しかったり苦しかったりしたら、お兄ちゃんに会わせる顔が無くなっちゃうから。・・・そう思っただけ」

ミチルさんに、望んでもないものを背負わせたくないだけ。
精一杯の言葉で伝えたかった。・・・分かってて欲しかった。
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