キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
お店の外で解散になり、そのまま通りを歩いていく二人の後ろ姿を少しだけ見送った。
羽鳥さんが吉井さんの手を掴まえて繋いだのを、彼女が見上げたところまで覗き見しちゃって、なんかこっちまで照れちゃう。ワケありな関係ぽいけどお似合いだと思うし、羽鳥さんの想いが叶うといいな。って、勝手ながら祈らせてもらった。


10時54分発の電車に乗り、そこそこ混みあってる車内でミチルさんにライン。うちルールは、帰る前に必ず到着時刻を申告すること。早くても遅くても。それでお互いに、『もう帰ってる』とか『まだ仕事』とか所在を知らせ合う決まりにしてるのだ。

計算して、だいたい11時20分過ぎには帰ることを伝えたら、すぐ返事が。
“駅で待ってて”?
迎えに来るつもりなのが分かって、“だいじょうぶ、自転車だし”って送信。
“危ないから行く”・・・って速攻でリターンされた。
こうなると、槍が降ってでも来るのがミチルさんだから。観念して、了解の返事をした。

スマホを肩掛けバッグに仕舞い、つり革に掴まって、ぼんやり窓の外を眺める。真っ暗い中を、不定形な色とりどりの光りが流れては消え、流れては消え。
ふと。羽鳥さんが言った言葉を思い出す。

『同居してる保護者は、“対象外”なの?』

ミチルさんと一緒に住んでるのを知ってる友達にも、たまに訊かれる。あんなイケメンと本当に何もナイのかって。
答えはいつも変わらない。あたし達の繋がりは、そんな安っぽいものと引き換えになんかならない。したくもない。

ミチルさんには、絶対に忘れられない人がいるんだよ。
ずっとその人だけを想って、彼は生きてる。
一途なミチルさんが愛おしいって思うし、そういうのも全部、丸ごと。あたしは愛してる。

大好きで、大事なミチルさんと一緒にいられるだけで、他になにか要る? 
こっちが訊きたいくらい。

胸の内で、ふっと笑みを転がした。

< 16 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop