キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
平日ってこともあって、広い駐車場は閑散としてた。
白のC-HRは、並木に沿った列の真ん中寄りに停めてあった。
入り口に近い方だって空いてるスペースは幾らでもあるのに、その黒いセダンは影みたいにピタリと真横に付け、誰の目からもアンバランスな違和感だったろう。

変わらない足取りで、そこに向かって歩き出したミチルさんに引かれるように。もたつきそうになる自分の脚を必死に動かして。
まだ少し距離がある内に、運転席から降りてきた黒いスーツの男性が、後部ドアを外から開こうとしてるのが目に映った。だけどミチルさんは構わずに、自分達の車へと近付いてく。
中から悠然と姿を見せた淳人さんを前に、足を止めて一瞥すると。あたしを守るみたいに胸元に抱き寄せて、冷ややかな声を放った。

「用は無いけど、一応言っておく。りっちゃんは僕の妻だ。今後一切、勝手に近付くのは赦さない」

「・・・・・・所詮は、紙切れ一枚だろう。大した効力とも思えんがな」

口角を上げ、淳人さんは不敵そうな笑みを滲ませる。

黒の三つ揃いに、黒のネクタイ、グレーのシャツ。独特な威圧感を漂わせる彼を、怖いと思ったことは一度もない。
後ろに流し気味の髪が精悍な表情を際立たせてても、淳人さんの眼は静穏だ。

「隆弘に用があるなら、済ませて帰るんだな。僕らは行くよ」

取り合う様子もなく、素っ気なく言ってミチルさんはあたしを促した。

「おいで、りっちゃん」

「リツ」

バリトンボイスに呼び止められて、反射的に顔を振り向けた。
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