キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「車、コインパーキングに停めてあるから」

「え?」

でもあたし、自転車が。

「明日の朝は僕が送ってあげるよ。土曜で休みだし」

とんでもない、普通に歩いて行ける距離です!

「そうしようね? りっちゃん」

にっこりと。ものすごい笑顔の圧力。・・・い、言えない、これ以上。

「・・・・・・うん。ありがと、ミチルさん」

寸でのとこで、色んなものを飲み込んで。無になって笑いを返す。


ねぇ。もしかして、お兄ちゃんが乗り移ってない? この過保護っぷり。




アパートに帰り。お風呂を済ませると、パジャマ姿でリビングに顔を出す。
ソファに座って、膝に乗せたノートパソコンのキーボードに指を走らせてるミチルさんに声を掛けた。

「お風呂、空いたよ?」

「ん・・・。もう少ししたら僕も入るよ」

ウェリントンフレームの黒縁眼鏡をした彼は目を離さないまま、返事はあくまで柔らかい。
まだかかりそうな雰囲気だから、珈琲でも淹れてあげようかな。
キッチンに行き、電気ポットでお湯を沸かす。
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