キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「あのね。りっちゃん」

冷たいジャスミン茶のグラスを、リビングテーブルに二つ置いた彼が。隣りに座ると、少しあらたまって柔らかな眼差しを向けた。

「引っ越ししようと思うんだ」

「・・・お引っ越し?」

目を丸くしたまま、脳内で思考回路をフル稼働させる。
真っ先に浮かんだのは、ミチルさんの転勤。まさか、とんでもない遠距離の支社に異動になったとか?!!
ううん、例えそうだったとしても、ゼッタイついてくけど! え、でも、それじゃあ会社辞めないとダメってこと?! 
淳人さんや睦月さんの顔が、走馬燈みたいに過ぎった。

勝手に色んなものが先走り、思わずフリーズしてると。
「なんて顔してるの、りっちゃん」と、ミチルさんがクスクス笑う。

「だ、・・・って、転勤、・・・じゃないの?」

恐る恐る。

「うん、違うよ」

違う? じゃ、なんで引っ越し??

「マンションを買ったんだ。ちょうど新築で手頃なのがあってね。駅はここより上り方面になるけど、通勤時間は今とそんなに変わらない筈だから」

今度はにっこりと微笑んだ彼は。事も無げにそう言った。
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